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デザインのちから!

動物図形を使ったマークのデザイン研究その4

 今回は、「PUMA」ブランドを構成する文字と動物図形に対し、種々似たような商標が出願され又は登録された事例を3例あげ、「PUMA」ブランドとの関係で、不正の目的、フリーライド、パロディーといった観点について、特許庁や裁判所がどのように考えたかを探りたいと思います。(裁判所判断には、ブログ筆者一部加工あり。)
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知財高裁平成22年7月12日判決 平成21年(行ケ)第10404号

動物図形を使ったマークのデザイン研究その3で、本判決で本件商標と引用商標Cの類否判断・出所の混同について観てきましたが、ここでは4条1項19号による請求について観ていきます。

 4条1項19号は「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用するもの」と定めていますが、同号が適用されるためには他人の商標と「同一又は類似の商標」であり,かつ「不正の目的・・・をもつて使用する」ことが必要となります。
 「商標と類似」が要件の一つとなっているため、4条1項11及び15号の検討で非類似とされた以上、19号も適用されないとの結論になりましたが、その理由が詳述されているので以下でそれを取り上げます。

本件商標の法4条1項19号該当性の有無(取消事由3)

  本件商標                 引用商標C(引用商標1)
SHI-SA 図形.jpgPUMA 引用商標C.png

1.「類似」の要件について
 引用商標Cはプーマ社の業務に係る商品を示すものとして周知であることは認定されましたが、商標非類似とされました。
 これに対し被告は、4条1項19号にいう類似の商標に当たるかは,容易に他人の業務に係る商品等を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標を連想させるほど類似しているかで決するべきであるところ、両商標とは,概ね中央のアルファベットの文字の体裁及びその右上方に配されたシルエット風の四足動物の姿態等で共通し,周知の引用商標Cの動物図形を記憶している取引者・需要者は,本件商標に接したときに上記動物図形を連想するから,両商標は類似する等と主張しました。

 確かに、『逐条解説』には、19号について、「全国的に著名な商標について出所の混同のおそれがなくても出所表示機能の稀釈化から保護することを目的とするものである。」とあります。商標の「類似」を「出所の混同が生じる範囲」と解さずとも、「広く認識されている商標を連想させるほど類似しているか」との主張も考えられます。出所の混同をするほど近似しているという意味での「類似」ではなく、商標と商品・役務との強い繋がり(連想)を徐々に弱めていくという行為に対し規制する規定として19号をとらえたのだと思います。

 しかし裁判所は、本件商標の外観と引用商標Cの外観とは必ずしも類似せず,動物図形の形状も相当程度異なるのであって,周知の引用商標Cの動物図形を記憶している取引者・需要者が,本件商標に接したときに上記動物図形を連想する蓋然性があるかは極めて疑問であるとして主張を採用しませんでした。

2.「不正の目的」の要件について
 本裁判所では、念のため、本件商標の使用に「不正の目的」があるか検討されました。
 原告は,本件口頭弁論において,本件商標の創作に際してプーマ社の商標に接したことを認める旨の供述をしているが、
①原告は,当初,沖縄の伝統的獅子像であるシーサーの面ないしシーサーの面及び「Shi―Sir」等のロゴをプリントしたTシャツを製造し,自らが取締役を務める沖縄総合貿易の店舗で販売していたが,若者に受け入れられるデザインを模索し,種々調査した上で本件商標を創作したこと、
②本件商標の跳躍するシルエットの動物図形には,沖縄を象徴するシーサーが沖縄から大きな舞台に跳び出してほしいという原告の願いが込められていること、
③原告が経営する会社が開設したインターネットの通信販売用のホームページ中には,「当店自慢のオリジナル商品『jumping shi-sa』どうですか?ブログでは沖縄お土産の情報を更新してます」等の記載があるのみで,プーマ社の業務に係る商品との混同を可能とするような記載は全くないこと、
④上記通信販売用のホームページのうち,原告が経営する会社の従業員等が記載した「ジャンピングシーサの意味2007.08.28 Tuesday 跳獅子(ジャンピングシーサー)」と題する項目には,「みなさん,このジャンピングシーサーって単なるプーマのパクリ。またはプーマのパロディーバージョンだと思っていませんか????似たようなデザインはありますが(うんうん,しーさー店長も初めはそう思ったし~・・・)・・・しかも!ちゃーーんと意味があるんです。・・・近年,沖縄の文化や人柄が全国的に認知されてきました。芸能や文化においても県出身者が数多く出てきています。一昔前とは異なり沖縄人は内気で人前にでないイメージが,今では『昔の話』の様です。このマークは世界に向かってうちなーんちゅが跳び出せと願いをシーサーに込めてデザインしました。by デザイナースタッフ・・・」との記載があり、
本件商標の動物図形部分の創作の意味につき上記②と同様の説明がされていることが認められる。

 また原告が経営する沖縄総合貿易は,主として沖縄県内の店舗やインターネットの通信販売で本件商標を付したTシャツ等を販売しており,上記Tシャツ等の販売ルートが相当限定されている上,沖縄総合貿易が商品を卸した小売店等においてプーマ社の業務に係る商品を取り扱っていることを認めるに足りる証拠はない。そうすると,既に我が国において現に引用商標Cが登録されていることにも鑑みれば,原告の本件商標の使用につき,周知商標が登録されていない状況に乗じて不正の利益を得る目的等や,補助参加人等に損害を与える目的等があるとまで認めることまではできず,原告に法4条1項19号にいう「不正の目的」があったとはいえないというべきである。

3.プーマ社の主張に対する補足的判断
・引用商標Cの周知著名性や独創性を十分に認識しながら,引用商標Cの信用又は名声に便乗して利益を得ようとの不正の目的をもって本件商標を使用するものとの主張に対し、それを認めるに足りる証拠はなく,本件商標の創作の経緯等に鑑みれば,プーマ社の主張は採用できない。
・原同社商標のパロディの趣旨で本件商標を作成し出願をしたもので、引用商標Cにあやかって売上げを上げようとするものであると主張するが、パロディの趣旨で本件商標を創作した事実を認めるに足りる証拠は存しない。原告が経営する会社が運営するホームページ中にも,上記のパロディの趣旨で本件商標を創作したことは記載されていない。関係者以外の者が原告とは無関係に上記Tシャツをパロディとして取り扱っているものにすぎなかったり、関係者以外の者が原告とは無関係に本件商標を論評しているものにすぎなかったり等、プーマ社の上記主張は憶測の域を出ない。

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KUMA事件
知財高裁平成25 年6 月27 日判決  平成24年(行ケ)第10454号
無効2011-890089号事件での無効審決に対する取消訴訟です。

   本件商標                      引用商標
KUMA.pngPUMA.png

商標法4条1項15号該当の妥当性
1.商標の構成と引用商標の周知著名性
 本件商標は,独特の太く四角い書体で,全体が略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表した「KUmA」の欧文字の右上に,左方に向かって前かがみに二足歩行する熊のシルエット風図形を配し,上方にゴシック体で小さく表した「KUMA」の欧文字を添えてなるものと認定されています。
 引用商標は,略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表した欧文字の右上に,左方に向かって跳び上がるようなピューマのシルエット風図形を配した構成態様として独創的であり,需要者に強い印象を与えるものであると認定されています。
 また、引用商標は,本件商標の登録出願時には既に,被告の業務に係るスポーツシューズ,被服,バッグ等を表示する商標として我が国の取引者・需要者の間に広く認識されて周知・著名な商標となっており,本件商標の登録査定時及びそれ以降もそのようなものとして継続していたと認めています。

2.本件商標と引用商標との類似性
 両者は4個の欧文字が横書きで大きく顕著に表されている点、その右肩上方に熊とピューマとで動物の種類は異なるものの、四足動物が前肢を左方に突き出し該欧文字部分に向かっている様子を側面からシルエット風に描かれた図形を配した点において共通する。両者の4個の欧文字部分は,第1文字が「K」と「P」と相違するのみで他の文字の配列構成を共通にする。しかも各文字が縦線を太く、横線を細く、各文字の線を垂直に表すようにし、角部分に丸みを持たせた部分を多く持つ縦長の書体で表されていることから、文字の特徴が酷似し、かつ、文字全体が略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表した点で共通の印象を与える。文字の上面が動物の後大腿部の高さに一致する位置関係が共通しており、足や尾の方向にも対応関係を看取することができる。

 原告は,両商標の4個の欧文字の書体は文字線の太さや隣接する文字と文字との間隔において構成を異にすると主張するが,前記各文字を子細にみれば,文字の縦線間の隙間の幅が若干異なる等の差異があるとしても,かかる差異は看者の印象・記憶に影響を及ぼす程のものではなく上記共通点を凌駕するものではない。

 以上から両商標は全体として離隔的に観察した場合、看者に外観上酷似した印象を与えると判断しました。

3. 取引の実情
 本件商標の指定商品は、引用商標が長年使用されてきた「ジャケット,ジョギングパンツ,ズボン,Tシャツ,水泳着,帽子,ベルト,スポーツシューズ」等とは同一であるか又は用途・目的・品質・販売場所等を同じくし,関連性の程度が極めて高く,商標やブランドについて詳細な知識を持たず,商品の選択・購入に際して払う注意力が高いとはいえない一般消費者を需要者とする点でも共通する。
 衣類や靴等では,商標をワンポイントマークとして小さく表示する場合も少なくなく,その場合,商標の微細な点まで表されず,需要者が商標の全体的な印象に圧倒され,些細な相違点に気付かないことも多い。原告は,原告製品は観光土産品として,観光土産品の販売場所で販売されていると主張するけれども,観光土産品は,土産物店のみならずデパート・商店街等でも販売され,同一施設内で観光土産品用でない被服も販売されていることが認められるから,販売場所も共通にする。

4.混同を生ずるおそれ
 上記事情を総合すると,本件商標をその指定商品について使用する場合には、これに接する取引者・需要者は、顕著に表された独特な欧文字4字と熊のシルエット風図形との組合せ部分に着目し、周知著名となっている引用商標を連想、想起して、当該商品が被告又は被告と経済的組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがある。本件商標は15号に該当する。

商標法4条1項7号該当の妥当性
 本件商標と引用商標の類似性及び誤認混同のおそれについては,上記のとおりである。
また、被告がスポーツシューズ,被服,バッグ等を世界的に製造販売している多国籍企業として著名であり,引用商標が被告の業務に係る商品を表示する独創的な商標として取引者,需要者の間に広く認識され,本件商標の指定商品には引用商標が使用されている商品が含まれていること,本件商標を使用した商品を販売するウェブサイト中に,「北海道限定人気 パロディ・クーマ」,「『クーマ』『KUMA』のTシャツ 赤フロントプリント プーマPUMAではありません」,「注意 プーマ・PUMAではありません」...「プーマ・PUMAのロゴに似ているような似ていないような。」等と記載されていること、原告は日本観光商事社のライセンス管理会社であるが、日本観光商事社は,本件商標以外にも,欧文字4つのロゴにピューマの代わりに馬や豚を用いた商標や,他の著名商標の基本的な構成を保持しながら変更を加えた商標を多数登録出願し、商品販売について著作権侵害の警告を受けたこともあることが認められる。
 
 これらの事実を総合考慮すると,日本観光商事社は引用商標の著名であることを知り,意図的に引用商標と略同様の態様による4個の欧文字を用い,引用商標のピューマの図形を熊の図形に置き換え,全体として引用商標に酷似した構成態様に仕上げることにより,本件商標に接する取引者,需要者に引用商標を連想,想起させ,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受け,原告は上記の事情を知りながら本件商標の登録を譲り受けたものと認めることができる。そして,本件商標をその指定商品に使用する場合には,引用商標の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)され,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力,ひいては被告の業務上の信用を毀損させるおそれがある。
 そうすると,本件商標は,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたもので,商標を保護することにより,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法1条)に反するものであり,公正な取引秩序を乱し,商道徳に反するものというべきである。したがって,本件商標は7号に該当するとの審決の判断に誤りはない。

裁判長裁判官 塩 月 秀 平 
裁判官 池 下 朗
裁判官 新 谷 貴 昭

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UUMA事件 
不服2008-10900(拒絶査定不服審判事件)

    本願商標                       引用商標
image001.jpgPUMA (UUMA).png
1.審査段階での判断
 第25類の洋服等を指定商品として、「UUMA」と動物図形からなる商標の出願(商願2007-35416)しましたが、審査では、プーマ社」がスポーツシューズ、被服等に使用して取引者・需要者に周知・著名な商標(引用商標)である図形部分と共通するもので、「UUMA]の欧文字は、引用商標と同様の書体であって、「UMA]を共通にするから、当該他人に承諾もなく、出願人が、本願商標の指定商品に使用することは、当該他人の周知・著名商標の名声に便乗し、その顧客吸引力にフリーライドするものといえ、これは、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際信義に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるとして商標法4条1項7号に該当するとして拒絶査定されました。これに対し、平成20(2008)年4月30日に不服審判が請求されました(不服2008-10900)。

2.拒絶査定不服審判審理の判断
 同審判審理の結果も同様でした。

商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」
(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、
(2)当該商標自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、
(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、
(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、
(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。その趣旨は、商標の構成自体が公序良俗に反する場合だけでなく、他人の名声を僭用して不正な利益を得るために使用する目的、その他不正な意図をもって行われたものと認められる限り、商取引の秩序を乱すものと解するのが相当である。

 そして、他人が築き上げた著名性を有する標章と同一又は類似の商標であって、その著名性にフリーライドすることや、その著名性や名声を希釈、既存することなど不正の目的をもって出願したものは、商取引の秩序を見出し、ひいては社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するというべきである。

 なお、引用商標の著名性についても認定していますが、ここでは省略します。

本願商標と引用商標の類似性について
 本願商標については、構成中の大きく顕著に表された「UUMA」の文字部分は、縦線を太く、横線を細く、かつ、角部分に丸みを持たせ縦長の書体で、あたかも横長の長方形の枠内にはめ込まれた如く表され、また、図形部分は、該文字部分に右側から左上方に向けて立ち上がる馬と思しき動物を側面から捉えたシルエット図形からなるものである。そして、その上部に「UUMA」の文字を小さく細い線で表してなるものである。
 一方、引用商標は構成中の「PUMA]の文字部分は、縦線を太く、横線を細く、かつ、図形部分は、該文字部分を飛び超えるように右側から左上方に向けて跳躍するネコ科の大型動物と思しきものを側面から捉えたシルエット図形からなるものである。
 上記認定をしたうえ、両商標を構成する4個の欧文字が、横書きで大きく表示されている点、その右上方に四足動物が右側から左上方に向けて飛び上がるように前足と後ろ足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれている点で共通し、文字部分のデザインについても共通し、結果、全体として捉えたときには、両商標はと構成の軌を一にし、外観上近似すると判断しました。

本願商標が商道徳に反し、社会公共の利益に反するか否かについて
 引用商標のモチーフの一つとなっている「ピューマ」の図形部分を「馬とおぼしき動物」に置き換え、欧文字部分も、あえて引用商標の「PUMA」と同じ4文字からなる「UUMA]とし、書体も引用商標にほぼ同様に酷似させて表したものであるから、請求人(出願人)が意図的に、周知、著名な引用商標の特徴を一見してわかる程度に残したまま外観を変えたものであって、本願商標を接する取引者、需要者に引用商標を想起させるとともに、引用商標について滑稽で風刺的な印象を与えることになり、顧客の購買意欲を刺激することを意図しているものと推認できる。

 このことは、近年、インターネット上のオークションサイト等において、本件商標と同様に4個の欧文字と該文字部分の右上方に動物のシルエット図形を配した構成よりなる標章に付した商品「Tシャツ、ステッカー」等が「PUMA」のパロディ―商品と称し、以下のとおり販売されている事情からもうかがえる。「プーマがアフロ頭になってパーマという...」「未使用!BUTA Tシャツ◆商品説明◆PUMA!?のパロディ!?...」「@プーマパロディー パンダTシャツ...」等(ブログ筆者省略記載)

 しかして、パロディーとは、文学急く品の一型式。よく知られた文学作品の文体や韻律を模し、内容を変えて滑稽化、風刺化した文学。日本の替え歌・狂歌などもこの類。また広く絵画・写真などを題材としたものをいう(広辞苑 第6版)。
 してみれば、本願商標は、プーマ社が、永年スポーツシューズ等に使用し取引者・需要者の間に広く知られている商標と承知の上で、当該他人の承諾もなく、引用商標に化体した信用・名声及び顧客吸引力に便乗し、不当な利益を得る等の目的のもとに、請求人(出願人)が引用商標の有する特徴を模倣して出願し、登録を受けようとしたものといわざるを得ず、かかる行為によって、引用商標自体に化体した信用・名声及び顧客吸引力を希釈化させ、あるいは損なうおそれがあるものといわなければならない。 商標の保護により業務上の信用維持・産業の発達・需要者の利益保護(商標法1条)の法の精神に反し、商取引の秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当し、商道徳に反し、社会公共の利益に反する。

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 以上、「SHI-SA」以外の商標「KUMA」「UUMA」については、4条1項7号で無効又は拒絶とし、フリーライド又はパロディの認められない境界線を示したように思います。しかし、ブログ筆者私見では、7号はあくまで公益保護のための規定なので、単に著名商標が希釈化されるだけでは7号は適用すべきでないように思います。本件に限って言えば、多く著名商標にフリーライドしたり、著作権侵害したりする原告のビジネスのやり方自体に対し、他にもそのようなビジネスが出るのを食い止めるべく、規制したという趣旨が伺えるように思います。

 さらに熟考していませんが私見では、「パロディー」は、表現の問題なので、そもそも出所表示機能を果たすとはいえず、商標的使用ではない、と考えることもできるかもしれないと思っています。

  また、「KUMA」「UUMA」の事案と異なり、「SHI-SA」の事案からは、本件商標が仮に「PUMA」のデザインのアイデアやレイアウトに影響を受けたとしても、コンセプトを独自に考えて、独自のメッセージや広告を行うことは、「不正の目的」を認定される度合いを低める一つの要因となると考えることもできそうです。 すなわち、「PUMA」の動物図形の基本的構成態様や、文字と図形の配置は確かに同一又は類似と考えられますが、文字の違い、図形における模様等の違い、文字や図形が発する意味の違いが「PUMA』ブランドとは全く違うので、その点で、本判決は妥当であったように思います。また、私見では本件商標を見てすぐに「PUMA」の商標を思い出すという感じではありませんでした。中央の文字は「SHI-SA」ですし、動物図形もシーサーなので、「言われてみると似ているかも?」と思う程度かもしれません。パロディであったとしても、この程度なら許されると考えてもいいのかもしれません。 
 

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