ブランドを育てる!
事務所所在のマンションから出てくると、でかいショーウィンドウが毎度目に飛び込んできます。「UNDERCOVER(アンダーカバー)」というブランド。海外高級ブランドかと思いきや、デザイナー高橋盾氏が1990年に設立した順国産。公式サイトは「こちら」。
ある日の店舗写真。ヨックモック青山本店の屋根の青色(左上)と、ここのショーウィンドウの赤色(左下)が惹き立てあっていました。
2022年1月30日撮影(Photo by BLM)
ちなみに「UNDERCOVER」の下段には「JUN TAKAHASHI」の文字。右上には登録商標を表すや、著作権を表すかと思いきや、(U)(丸ユー)の文字が。要するに、これが識別標識だよと示せばよく、他のデザインに埋没しないのgoodアイデア!だと思います。 ちなみに、の効果については、裁判例あり(ピーターラビットのロゴ事件 平成14年12月27日判決 東京地裁平成12年(ワ)第14226号、同平成14年(ワ)第4485号)。
2022年1月30日撮影 (Photo by BLM)
で、これを手がかりに、さっそくJ-PlatPatで検索。「株式会社アンダーカバー」さんを権利者として、複数の登録商標がありました。例えば、登録第4207134号では、以下の商標が登録されています。
指定商品は、第18類 かばん類,袋物 です。他にたくさんの商品区分で、この商標が登録されています。
ある時は、「蛾」のデザインがショーウィンドウに!マンション出るとすぐ目に飛び込み「嫌がらせかぁ」と軽く思いましたが(笑)、独創性ありです。
2021年12月29日撮影 (Photo by BLM)
「こちら」のほぼ日刊イトイ新聞に掲載された「90年代、「裏原」のころ。」とのタイトルの下、鈴木哲也氏との対談が面白いです。鈴木氏が『受け取る側の感性に優れた「探す天才」たちが探しても見つからない自分たちの「欲しいもの」をかたちにしたんだと思う。』と述べておられる。(『』内引用。)
こう読んでいくと、ワタシ(≒大衆≒感度の弱い人≒別に悪いことではない)の知らない頭のうえで、キャッチボールをしている人たちが、この店舗を支えているように思います。表参道はアートの街だなと(今は不動産投資の街となりつつあるのか?!)。。アートに隠された意味が読めないとその価値がわからない。価値が読める人間は、より価値を感じ、そのアート作品(ブランド商品)は、より価値を増す、という仕組みになっているような気がします。
さて、ちょっと話を変えて。とある日。事務所からでてきたら、以下の写真のようなものを見つけ! 『ANARCHY CHAIR」ですって。
2022年2月26日撮影(Photo by BLM)
〈ブランドのイメージの話〉
「UNDERCOVER/JUN TAKAHASHI」のブランドの商標に近い位置で「ANARCHY CHAIR」を表記しているとすると、重要なメッセージ性が感じられます。
自己の商標に、強い情報を持つ記号等を併記する場合、その情報が自己の商標に付着し得るので、その位置関係は、よくよくコントロールする必要があります。
逆に、併記しているということは、この記号(以下の写真で言えば「ANARCHY CHAIR」の文字と、特徴的な丸と「A」の文字を背負う椅子の形状)は、「「UNDERCOVER/JUN TAKAHASHI」のブランドにとって、重要な位置付けなのだろうと思いますね。
2022年2月26日撮影(Photo by BLM)
〈商標法実務的な話〉
上記はブランドのイメージの話ですが、商標実務的な話を考えると、洋服屋のショーウィンドウに「ANARCHY CHAIR」と表記して大丈夫?と一応立ち止まって考える訳です。
ちなみに、J-PlatPat で、「ANARCHY」又はこれが含まれる文字を検索すると、以下の登録商標が出てきます(権利者は関係なさそう...。未確認です。)。詳細は「こちら」をご参照。第25類の洋服等を指定しており、存続期間も満了していないので、「おやっ。この権利を侵害しないか大丈夫?」とリスク管理はしておいた方がいい感じではあります。まあ「ANARCHY CHAIR」と一連一体であるという点と、椅子について使用しているので権利範囲外という点と、そもそも出所識別標識として使用していない、、、等いろいろ言えると思いますが。法務部的には嫌でしょうね
(指定商品について以下省略。)
fashionsnapサイト(こちら)によれば、『デザイナー高橋盾が手掛ける「アンダーカバー(UNDERCOVER)」が、天童木工製の「アナーキーチェア(Anarchy Chair)」を2月26日に発売する。...』とのことです。「天童木工」さんについては「こちら」をご参照。柳宗理さんの椅子に関わっていたりするメーカーです。
カーサ ブルータス・サイト(同雑誌の2022年2月号より)の「こちら」の記事によれば『〈アンダーカバー〉の高橋盾』さんが、『自身がデザインした椅子』のようで、その製作が、『天童木工』さんによるもの、ということのようですね。こちらの記事を引用させていただくと、『高橋盾がデザインし、佐々木一也と共に作り上げた《アナーキーチェア》。これまで〈アンダーカバー〉のアトリエ用やワンオフ(一点物)として作られてきたが、この2月にデザインを一新して一般発売される運びとなった。』とのことです。
〈商標法実務的な話再現〉
うむ、上記fashionsnapサイトの「天童木工製の「アナーキーチェア(Anarchy Chair)」という言い回しは、ちょっと違うような...。
ここで、BLMとしては、法務部的話再現(この会社の担当者さんの名称は実際のところ不明。)、「アナーキ-チェア」って、天童木工さんのブランドじゃなくて、「やっぱりうちのブランドじゃん」ってなことで、やっぱりリスク管理に慌てる感じ 「いや、待て、アナーキーチェア、アナーキーチェア、一連で称呼、どころか連呼されてるし、一連一体で、上記登録商標「ANARCHY(アナーキー)」とは非類似だよ、そもそも商品が非類似だし」ってなことで、頭がフル回転し、「まあ、大丈夫かなぁ」てなことになるような(はっは妄想スミマセン。)
〈より視野を広げて、アート的な話〉
毎度即席(スミマセン)のウィキペディア情報によれば、『アナキズムのシンボル』の項目で、『アナキズムのシンボルとして一般に知られているものは黒旗とサークルAである。アナキストは伝統的に政治活動におけるシンボルの重要性に否定的だが、それでもこの2つは彼らの思想の象徴として広く採用されている』とのことです。
なるほど、サークルAというのは、もはや一私人に独占させるべき記号ではないようですね。そもそも単純な図形と「A」の構成から成る図形は商標登録に馴染まないし、「アナキズム」というのは、文字列からは「無政府主義」程度の意味であり、それが背負う意味は、歴史的、思想的な深いものがあり、と、考えると、本日のこの椅子は『〈アンダーカバー〉のアトリエ用やワンオフ(一点物)』という、いわばアート作品がありその複製品といった類いのもの(いや、それ以上ではあると思う。)と言えるかもしれません。この椅子を買う人は「椅子」を買う、というより、ブランドの思想の記号を買う、ということなんでしょうかね...。
うぅ難しい。法務部的(またまた登場、妄想の法務部的部員)には、自社が発している価値はなんなのか、社会に受け取られる価値はなんなのか、を見極めて、知的財産法上のリスク管理や価値を維持する活動に貢献しないといけない訳ですね。アートが入ってくると難しい!
by BLM
本日の記載は「こちら」と「こちら」を抜粋・修正して書きました。
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