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出願態様は、文字で行くかロゴで行くか?

 出願商標の態様について、「文字列そのもの(例えば、明朝体やゴシック体)」で出願すべきか、又は、「ロゴ(デザイン化された文字)」で出願すべきか、商標態様についてご質問を受ける場合があります。

 両方出願するのが望ましいのですが、費用対効果の問題もあります。まずは、文字列そのものに登録性があれば、文字で出願するのがよいと考えます。その場合、登録後に、権利者が、多少デザインを加えたロゴで商標を使用した場合に登録商標の使用と認められ、一方、他社が多少異なる態様でデザイン化した同じ文字列を商標として使用した場合、権利侵害として排除できる可能性は十分にあると考えるからです。
 
 他方、文字列だけでは普通名称や記述的文字等として識別力が低い(登録性が低い)と考えられる場合は、デザインを加えたロゴでの態様や、文字に特徴的な図形を結合させた態様で出願すると登録されやすくなると思います。
 
 そのような実務において考えさせられる拒絶査定不服審判の審決を直近の審決公報(2014.9.26発行)中で見つけました。

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審判番号:不服2014-6474 (確定日:平成26年8月19日)

 本願商標(商願2013-18833)は、以下のようなものです。
 image001.jpg
 
 審査では,本願商標が以下2件の登録商標に類似するとして、商標法第4条第1項第11号に該当するとして拒絶査定されました。そこで出願人は拒絶査定不服審判を請求しました。
シータ図形商標.png
登録第5123814号(引用商標1) 登録第5195822号(引用商標2)
 
 本願商標と、引用商標1及び2は「シータ」と発音されるので、称呼は共通します。しかし、本審判では、少なくとも引用商標1(左)との類似を否定しました。
 
 すなわち、『本願商標は『「Θ」のギリシャ文字をモチーフにしたと思しき図形部分と,その右横に「THETA」の欧文字を書した構成からなるところ,該「THETA」の文字は,「シータ,ギリシャ語のアルファベットの第8字」の意味を有する』と認定した上で、『「シータ」の称呼を生じ,「ギリシャ文字のシータ」の観念を生じる』と認定しました。
 
 他方,引用商標1は、その構成から『該「シータ」の文字は,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語』と認定しました。私見では、引用商標の図形も「「Θ」のギリシャ文字」に着想を得てデザイン化したものと考えますが、審判官はそのように把握しなかったようですね。
 
 つまり、『称呼において共通にする場合があるとしても,外観及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれはないから,これらを総合すれば,両商標は互いに相紛れるおそれのない非類似の商標』として、本願商標に対し登録審決を与えたのです。
 
 他方、引用商標2との関係では抵触する商品を削除しました。引用商標2は図形から「Theta/シータ」の文字が認識できたので、出願人はこれとの類似は解消できないとして、抵触する商品を削除したものと考えます。
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 以上を参考にすると、商標を、文字にデザインを加えたロゴでの態様や、文字に特徴的な図形を結合させた態様にして登録させた場合、『称呼において共通にする場合があるとしても,外観及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれはない』として、自己の登録商標と同じ称呼を有する他人の商標が後発的に登録される事態も考えられます。本件の場合、特に先行の登録商標(つまり引用商標1)がカバーしたかったのは、「Θ」のギリシャ文字との関連を持った商標であったと考えられますので、まずは「theta」と「シータ」を各1件ずつ又は二段併記にした1件として出願しておくのが、後願排除の効果も含めたリスク管理に有効であったように思います。加えて、自社の使用する媒体は多岐にわたり、図形商標だけでなく、文字列のみで表記する必要もあるように思います。その際に、「theta」の文字列や、「theta」を意味するものとしての「シータ」の文字列を権利化できていないと、ビジネスの展開上支障をきたすように思いました。

お断り: 今回取り上げた審決については、本願商標と引用商標の権利者は互いに競合しない関係にありそうです。引用商標の権利者も、図形的使用のみカバーできればよく、文字列のみまでの権利化は不要と考えた可能性があります。具体的な事情があるでしょうから本願や引用商標の出願態様に批判をするものではありません。

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