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欧州共同体商標制度の概要

1.前提
 ヨーロッパ出願と言った場合、①イギリス、フランス等各国毎に各国官庁に出願する場合と、②欧州共同体商標(Community Trade Mark (以下「CTM」と言います。))出願を欧州共同体商標意匠庁に行う場合の、少なくとも2つの方法があります。今回は、CTM出願に絞りお伝えします。CTM出願は、1件の登録でEU加盟国(現時点で28カ国*)全域をカバーする商標権の取得を目的とするものです。
 
*オーストリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、英国、 チェコ、エストニア、キプロス、ラトヴィア、リトアニア、ハンガリー、マルタ、ポーランド、スロベニア、スロバキア、ルーマニア、ブルガリア、クロアチア
 
 CTM出願のデメリットは、1カ国で拒絶等になると、出願全体(各国全体)が拒絶等される点です。また、方式と絶対的拒絶理由(主に、商品の普通名称等でなく識別力があるか?)の審査が行われ、相対的拒絶理由(主に、他人の先行商標と同一又は類似か?)の審査は第三者の異議申立てに委ねられていますので、この異議申立てがない限り、本来、抵触することのない登録が併存登録される状態も発生します。
 
 以上のデメリットは、逆に考えると、CTM出願では、その商標が普通名称等の識別力が低い商標でない限り、比較的容易に登録されているように思います。加えて、EU各国に出願する手間と費用を考えると、CTM出願は、ヨーロッパ進出の最初の一歩として利用されているように思います。なお、CTM出願後、自社商標のヨーロッパでの浸透度が高まると、別途、重要国で個別出願を行うケースも見られます。
 
 なお、商品展開国が、例えば、イギリス、フランス、イタリアの3カ国だけ、というような場合は、各国毎に出願する方が、より着実に権利化を進めることができ、安定した権利を得られると思います。
 
2.出願前調査
 CTM出願では上述のように、相対的拒絶理由(他人の同一又は類似の商標と抵触しないか)については原則として審査しませんが、後述のように第三者から異議申立てをかけられる可能性もありますので、事前にリスクを知るべく、CTM登録と、商品展開する上で重要となる国は出願前調査を行うことも検討すべきです。また、絶対的拒絶理由(主に、商品の普通名称等でなく識別力があるか?)の審査は行われ拒絶理由が通知されますので、この点も出願前調査がベストです。
 
3.出願
(1)手続で必要な点
 出願人のお名前・ご住所の英文表記が必要です。代理人への委任状は不要です。
 
(2)1商標多区分・指定商品/役務の記載
 1つの出願に複数の区分を含めることができます。
 
4.審査
(1)絶対的拒絶理由
 方式と、絶対的拒絶理由(主に、商品の普通名称等でなく識別力があるか?)の審査が行われます。拒絶理由書が送達された場合、反論の機会が与えられ、拒絶理由が解消しない場合は、拒絶査定されます。(拒絶査定に対して審判請求も可能ですが、それ以外に各国出願に変更することも可能です。 この場合、拒絶の確定日または取下げ日から3カ月以内の対応が必要です。)
 
(2)相対的拒絶理由
 登録可能性(又は異議申立ての可能性)の判断材料を与える程度のものとして、欧州共同体商標意匠庁がCTM登録・出願について、相対的拒絶理由(主に、他人の先行商標と同一又は類似か否か?)を調査し、出願人に調査報告書を送付し、その先行商標の所有者には、調査報告書に引用された旨が通知されます。EU各国官庁(ドイツ、フランス、イタリア除く。)の調査(国内の先行商標対象)は出願時に希望し、手数料を支払った場合に行われます。
 
 出願人が、この調査報告書を受け取ってから少なくとも1ヶ月経過後に出願公告がされ、出願公告の日から3ヶ月が異議申立期間となります。この間に、上記調査報告書を受け取った先行商標の所有者やそれ以外でも自社先行商標と抵触すると判断した第三者が、相対的拒絶理由(主に、他人の先行商標と同一又は類似か否か?)を主張して異議申立てをする可能性があります。
 
5.登録
 上記異議申立期間内に、同申立てがなかった(又は、認められなかった)場合は、登録されます。
 経験上、問題がなければ、出願から約5、6カ月で登録されています。 
 
6.存続期間
 商標権の存続期間は、出願日から10年です。
 更新ができます。各国分離して更新はできませんが、EUをカバーする一つの権利として更新できます。
  
7.その他
 欧州共同体商標の侵害事件は、欧州共同体商標裁判所(構成国の国内裁判所が指定されている)及び構成国の法制において争われます。CTMを規制する法の解釈に疑義がある場合は、欧州司法裁判所(EU法体系の解釈を行う欧州連合の最高裁)にも解釈を委ねることができます。

<免責事項>以上は、弊所のこれまでの経験、及び、2014年10月7日現在確認している事項です。具体的にCTM制度を利用した出願をお考えの場合は最新の情報に接してください。上記情報をもとに手続きを行い損害が発生した場合でも、弊所は責任を負いません。ご了承ください。

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